六畳一間自慰的音楽批評

部屋がライブハウス。

Palevein「palevein」

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極局所的界隈で大人気のバンドPaleveinの1st ep「palevein」が届いた。

曲についてとやかく言うのはまず置いといて、まず、ジャケ買いは避けられないこのデザインの良さ。

ep発売します!との発表と共に、このジャケットも公開となったわけだが、即座に画像保存してiPhoneのロック画面にしました。

 

以下、実写版

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ステッカーはギターに貼った

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そして曲

※EPでは3曲目


Palevein/Void(live)

私含め、このMVでガッポリ心を掴まれた人が極局所的人口の100%をなしているといっても過言ではない。

 

個人的にレッチリのTシャツを着てる奴はマジでダサいと思っていて、これはもうほんとにレッチリTシャツアレルギーなんじゃないかと言うくらい嫌悪感を抱いてしまう。

きっとこれはバンドTシャツを着て、メロイックサインしながら「ロック最高!」と叫んでいればカッコいいと思ってる勘違い野郎が脳に浮かんできてしまうからだろう。

 

しかし、Paleveinに関しては例外だった。

 

ロック最高なんて思ってるやつに

「 あなたは笑って 優しさは孤独を注ぐだけだね」

なんて歌えるわけ無いからだ。

 

このバンドの歌詞はどの曲のどこを切り取っても暗い。

 

最初に紹介した”Void”の和訳

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曲名からして暗いのに「微温い浴槽で溺れる君」で曲が始まるので救いようがない。

 

 

このEPの1曲目「枯れ花」の歌詞

 

ない才能を絞って書いた手紙も君に届かないさ

インクは薄くなってなぞった跡だけが残った

 

才能はない、手紙も届かない、インクもない、ただ何もできない無力感を知らしめるかのようになぞった跡だけが残る。

こんな仄暗い、底の無い底へただ落ちて行くだけのような歌詞は最近あまり見ないと思う。

 

これは個人的な意見だけど、落ち込んでる時やもう死んでしまいたいと思っている時って、明るい曲なんかじゃ全く意味を成さないんですよね。

例えば、今にでも死んでしまいたいと思ってしまうことがあって河川敷で一人座って呆けているときに「大丈夫だ!世界は楽しいことばかりだ!お前が死んだら俺が悲しい!!」なんて声かけられったって、そのときは元気のゴリ押しでどうでもよくなってしまうかもしれないですけど、結局それは対症療法でしかないんです。翌日起きたらまたダウナー決め込んじゃうんですよね。

そうゆうときって何も言葉なんてものは要らなくて、ただ隣に座って夕日でも見ながらタバコでも酒でもしてくれていれば、自分でもよく分からないですけど、なんかそれで俺は少なくとも”死にたい”とは思えなくなるというか。死にたいという感情を「少なくとも」と表現するのは間違いかもしれないが

 

お前のために何かしてやれることは無いが、お前が死にたいなら俺も一緒に死ぬよ。

 

と言わずして言ってくれているような気がする。

そう言われた方が俺は救われる。

 

個人的な意見とは言ったが、俺みたいな一般人がそう思うのだから、落ち込んでいるときこそ暗い曲を聞きたいなんて人はごまんといるはずだ。

 

無理に明るくなる必要なんか無い。

暗いなら暗いままで、明日が来てほしくないのなら起きなくていい。

そういった暗さの包容力があるバンドだと思います。

 

このEPには収録されていませんが、最後に私の好きな曲を。

soundcloud.com

君島大空「午後の反射光」

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この名前を初めて見たとき「君に届けと恋空を合わせたような名前だな」と思った。

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 この類の恋愛映画は個人的に大っ嫌いなので「天才天才言われてるけど大したことないんじゃないの〜君島くぅ〜ん?」とまったくもって的外れなヘイトを抱え、喉元まで悪口がきている状態でアルバムを聴き始めた。


君島大空 MV「遠視のコントラルト」

 

悪口を今か今かと、あんぐり開けている口に、フルスイングで拳を捻じ込まれたかのような衝撃が走った。

RadioheadのParanoid Androidを初めて聴いた時の衝撃に近かったと思う。


Radiohead - Paranoid Android

 

なんだけど曲がRadioheadのそれとは少し違うというか、編曲を一本の横線として表現した時にParanoid Androidの前半部分は上下の振幅が少なく、後半になるにつれて振幅が大きく、激しく、歪に変化していくような感じだが、遠視のコントラルトは違う曲が同時に流れていくような感じ。謂わば描き方の違う二本の線で描かれている曲。

一聴すると、相反する二本の線ではあるが、カマボイスの奥に荒々しいノイズギターがある事で「カマ野郎だと思っていたが、どうやら只ならぬ何かを持っていそうだ…」と感じたり、逆に喧しいとも言えるギターの中に、繊細でガラス細工の様な声とメロディを乗せることでその美しさが際立ったりと。

要するに曲調のコントラストで互いを高めあってるように感じた。

 

そう感じると、ブログ冒頭に載せたアルバムジャケットも三角形の無機質とも言える図形と、手や目などの身体の一部、言うなれば有機物との対比、直線と曲線というコントラストを描いたジャケットだと思う。正直、一枚の絵としても芸術性が高いと思う。と思えば、中身は真っ白。ここでも対比が。

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しかしこのアルバム、これだけでは終わらない。

「遠視のコントラルト」から30秒強のインスト「叙景#1」を挟んで、アルバム名を冠した7分47秒の大曲「午後の反射光」が始まる。

こちらもDTMアコースティックギターの二本線で描かれた様な曲だが、この曲、多幸感が半端ない。

長い曲の褒め言葉として「何分間があっという間に終わる」というのは常套句ではあるが、この曲はまさにそれ。多幸感と引き換えに、幸せは長く続くものではないと暗喩しているのかと思ってしまうぐらい早く終わってしまう。

 

Pitchforkごっこするなら9.1点を与え、年間ベストアルバムにランクインする事間違いなしの名盤でございます。ただ、声やメロディが繊細過ぎて車内でかけるとまったく聴こえなくなるのが問題だと思いました。まぁテンションアゲアゲドライブGoGo!!な時にかけたくなる様な曲ではないと思いますが…

 

それと収録曲ではありませんが、僕の好きな曲を。

翻弄(古曲)demo by Ohzora Kimishima | Free Listening on SoundCloud

 

最近、あからさまに違和感のある音を入れる曲を作るアーティストが、新世代として評価され始めてる様な気がします。例を出すなら長谷川白紙とか。

最初は違和感の方が勝りますが、慣れたら病みつきです。納豆、パクチー等と同じですね。

嫌悪感は最初だけです。僕も長谷川白紙をボロクソに言いそうになりましたが、今じゃ完全に好きです。

あなたも「こんなもん最初に食った奴は変態だけどすげぇよな」とエビ、カニ、フグを最初に食った猛者達と同様に賛辞を贈られたいのなら、今聴くべきアーティストかと。

 

探照灯#1_Demo by Ohzora Kimishima | Free Listening on SoundCloud

清水煩悩「ひろしゅえりょうこ」

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一番最初に聞いた曲はこの曲だった。


清水煩悩「大天国」(Official Music Video)

 

かわいい女を曲流しながら踊らせとけばMVと言える昨今ではあるが、ドカチン会社の事務員みたいな女がサイコな感じで役を演じてるMVは珍しいのでは。うちの事務のおばちゃんも実はこんなサイコな面があるのか…?とちょっと思ってしまった…

 

あるバンドマンのツイートで知ったのだけど、このMVなかなか面白い。

歌詞の英訳字幕が出ているのだが、”神様”の訳が”god”なのだ。

キリスト教一神教であるため、神様は固有名詞になる。だから、本来”God”と大文字で訳すことになると思うのだが、終始小文字の”god”で字幕が続く。

この謎は歌詞とMVに目を向けると見えてくる。

 

神様なんていない

だけど何かを信じてたいや

神様みたいなものをずっと探してる

ああ ここは大天国

ああ ここは大天国

 

 八百万の神という言葉がある。

これは古代日本の神観念を表す言葉であるが、早い話が「森羅万象すべてのものに神が宿っている」みたいなことである。

植物にも無機物にも、今見ているスマホにも、大事にしているCDにも全部神様が宿っているという考え方だ。

 

この大天国という曲もといMVはこの観念を表現したものであると思っていて、MV内ではおばちゃんが清水煩悩を信仰にも似た崇め方をする。悪い言い方をするとサイコなファンである。

変わって、MV終盤ではおばちゃんが猫に餌付けをしている。この光景、猫から見たら「何もしてないのに餌をくれるニャンて、ニャンていい人ニャンだ!神様ニャのか!?」と思っているに違いない。

そう、神様なんてものはどこを見渡しても、海をど真ん中から割って出てくるような神々しい聖人君子じいさんとかはいたりしないが、誰だって誰かの神様(のような存在)になれるし、そう考えるとむしろそこら中に神様なんているみたいな、まさに八百万の神をMVは表しているのだと思う。

 

話は戻って、これが何故”god”である答えに繋がるのかというと、ヒンズー教古代ギリシャの宗教などの多神教の場合は神が複数いるため”God”が固有名詞ではなく名詞になる。そのため小文字の”god”になるのである。

要するに、前述の八百万の神を歌った曲であるため固有名詞のGodではなく名詞のgodを字幕としてつけたということだ。

 

一つの曲紹介で1000字近くも語ってしまった。自慰的とはこういうことだぞ。置いてくからな。

 

さて、2ndアルバムである「ひろしゅえりょうこ」を買ったわけだが、収録曲である「大天国」以外も全編アルペジオによる弾き語りを中心とした8曲25分のアルバムとなっている。

シンセやサンプラーを使った先進的なサウンドでもないし、ライブハウスから叩き上げの泥臭いギターサウンドでもない。音数も多くないし、メッセージ性が強い歌詞でもない。むしろDAKARAで水分補給しようだの、レバーをよく噛んで食べれば心配内蔵だの。わけわからん歌詞が多い。

ブッダ♪常夏♪キリスト♪富士山♫じゃないんだよ。


清水煩悩 - ブッダ常夏キリスト富士山

 

 

極めつけは一緒に買ったこのステッカーである。

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怪しい新興宗教の匂いがプンプンしますなぁ~!!友達がこのステッカーを貼っていたら完全に一線置いてしまうな…。

 

この御札の呪いの所為か4周くらい続けて聞いてしまった。まぁ呪いは冗談として、精進料理のようにサラッと聞けてしまうアルバムであった。素朴でアンビエント的な音楽ではあるけど、どこかキャッチーなフレーズワークであるから何回聞いても飽きなかった。言い方は悪いが、派手なキャッチーさは無いが何故か耳から離れないローカルCMみたいな、妙な中毒性があった。仕事中に「ブッダ常夏キリスト富士山♫」ってつぶやいてしまいそうで怖い。

 

水曜日のカンパネラコムアイが天才と評していたので、こちらも肩肘張って再生ボタンを押したが、1周聞き終わる頃には横になりながら酒飲んでた。酔って半分寝ながら聞くのがこれの正しい聞き方かもしれんな。

まさに六畳一間でダラダラしながら聞くには最適のアルバムであったと思う。


清水煩悩 / レバー

 

よしなに

私はライブが嫌いだ。

ただそこに真っ当な理由は無い。ただ、人混みが嫌いなだけだ。

 

でも自分の部屋なら誰もいない。どんなキモいノリ方したって、人の目なんて気にならない。

 

転換だって指1本で1秒出来る。

疲れたら座って聴ける。

しょうもない曲だってスキップ出来る。

 

自室最高。六畳最高。

 

これはそんな音楽的引きこもりが偉そうに音楽を語るそんなブログ。